防犯性能に優れた新しいタイプのカギが開発されても、その構造や特徴が研究しつくされて、解錠方法やそれ専用の特殊な器具が開発されていきます。インターネットによる情報化社会は、かつて一部の人間しか知り得なかった特殊な知識や情報を、一瞬にして世に広めることになりました。このことが、防犯性能の優れたカギを開発しても、どこかでその解錠方法が研究されてしまえば、その後あっという間に広められてしまうという状況を作り出してしまったのです。

デジタルキーのパスワードとは違い、例えば家の玄関に取りつけるカギをしょっちゅう取り替えるというわけにはいきません。つまり研究されつくされ、簡単に解錠されるとわかっていても、そのカギを使い続けるしかないというのが現実なのです。
つまり現実という側面で考えた場合、カギの防犯性能というのはピッキングなどによって不正解錠されないことよりも、そもそも侵入盗に不正解錠を試みられないこと、つまり標的にされないことが重要だと言えるでしょう。逆に言うと、本気でプロの侵入盗に狙われてしまったなら、どんな厳重なセキュリティーであっても完全に防ぎきるのは難しいということです。

それでは侵入盗が不正解錠をあきらめるようなカギとはどんなカギでしょうか。ひとつ考えられるのは、そもそもその玄関に鍵穴がないことでしょう。どこにあるのかわからない鍵穴は、さすがにどんな技術を持つ侵入盗にも解錠することは不可能です。玄関の鍵穴が特殊な方法でしか出現しないという防犯システムアはまだ登場していませんが、近いのはデジタルキーシステムかもしれません。

そしてもっとも現実的な防犯対策は、カギを複数付けることです。ワンドアツーロックという言葉もありますが、不正解錠をこころみる侵入盗にとってみれば、その解錠対象がふたつあればその分侵入までに時間がかかるわけですから、わざわざ危険を冒すリスクは回避するのが普通でしょう。